2007年11月5日月曜日

ある体験

4歳年上の従姉が一人暮らしになって以来、年に2度1泊か2泊の旅行をしています。まだ二人ともなんとかついていけますので、お膳立てのしてあるツァー旅行を選んでいます。今年の秋は「伊勢志摩ミステリー旅行」を選びました。その2日目、昼食は海女小屋でということでした。「海女小屋」・・以前に1度か2度テレビで見た記憶とおなじようなつくりの,部屋の真ん中に大きな囲炉裏があり炭火が燃えて海女さんが一人すわっていました。海女さんは今はスウェットスーツを着るのだそうですが私たちのイメージどうりの白い作業着を着ていました。観光客のための装束なのでしょう.一行の一番後から入っていった私は海女さんの隣に座りました。突然海女さんが30センチ近い大きなイセエビをポイと火の上に放りました。「可愛そう!」期せずして女の人たちが声を上げます。串を打たれたえびは飛び跳ねることもできず手足?を伸ばして業火から逃れようともがいています。これが残酷焼きかとため息をつく思いで眺めていると「これ乗せて、火の上に、」と海女さんが海老を隣の私に渡しました。「え、えェ、、何で私が?」と思いました。今私の座っている席はいつも海女さんのお手伝いをするのだそうです。手袋をはめて海老をつかみました。掌の中でもぞもぞと動いているのを振り切るように火の上におきました。ぐさッぐさッと串をうち次々に海老が渡されます。スピーティーです。考える暇もなく人数分の海老を火の上にのせました。程よく焼けました。残酷な行為をした嫌悪感や憐憫の情よりも食欲はずっと上回っておいしいものを食べた満足感に浸りました。でも掌のもぞもぞした感触はいつまでも忘れられないだろうと思います。海にもぐって高価な魚介類をつかんでくる海女さんは60年もこの仕事を続けていると言いました。当然日焼けして逞しいからだでした。ひとつの仕事に練達した女性特有なゆるぎない落ち着きをもち、無駄のない動きやら話し方やらで、食べ物の美味以上に私はこの人に魅了されてしまったようです。長く生きると思わぬ出会いもあり体験もあるのだと思いました。